2026年8月、中国河南省新密市人民法院は、契約詐欺罪で7人の被告に対し懲役1年から4年の実刑判決を言い渡した。事件を主導したのは、リチウムイオン電池の製造資格を一切持たない急造グループだった。彼らは2025年3月から犯行を重ね、1年半足らずの間に64人から計130万元(約2700万円)以上を騙し取っていた。
ショート動画で拡散された「新エネルギー副業」の罠
犯行の糸口となったのは、ショート動画プラットフォームでターゲット層に向けて配信されたフランチャイズ加盟広告だった。「初期投資が少なく、未経験でもすぐに始められ、自宅にいながら月収1万元超」という甘い謳い文句は、副収入を切実に求める人々の心理を突いた。単なる手作業の軽作業が、「新エネルギー分野のリチウム電池受託加工」という最先端の看板にすり替えられたのである。
現地説明会に足を運んだ被害者は、数千元から数万元に及ぶ保証金の支払いを求められた。警察の発表によると、1回で1万9000元以上の保証金を支払わされた被害者も確認されている。高額な保証金というハードルは、ある程度の貯蓄を持ちながらも業界の実情に疎い層を選別するフィルターとして機能していた。
図:リチウム電池受託加工詐欺の宣伝トーク。出所:CCTV財経(報道番組のスクリーンショット)
合格不可能な検品基準が塞ぐ返金ルート
この手口は、業者側に一方的に有利な免責条項を盛り込んだ契約によって成り立っていた。被害者が原材料を持ち帰り、講習通りに組み立てて納品しても、完成品は検品時に例外なく「不合格」と判定された。
業者が持ち出す理由は、気密性の不足や微小な寸法誤差など難癖に近いものばかりだった。契約書によって受取側が検品の絶対的な裁量権を握っており、被害者が費やした労働は一方的に無価値とされた。 何カ月作業を続けても加工賃は1円も支払われず、預けた高額な保証金も「契約違反」を理由に返金を拒否された。
無資格の町工場が突いた技術的な情報格差
警察の捜査により、ハイテクの看板に隠された実態が明るみに出た。関与した7人のグループは、電池製造に必要な公的資格を何一つ持っていなかった。受託者に支給されていた原材料は単なる産業廃棄物であり、重さを合わせるためだけの詰め物にすぎなかった。
図:被害者が組み立てた自称「完成品バッテリー」。出所:CCTV財経(報道番組のスクリーンショット)
犯行グループは架空のサプライチェーンを偽装し、保証金を吸い上げ続けた。専門的な技術用語に対する一般市民の馴染みの薄さが、詐欺の本質を覆い隠す格好の隠れ蓑となった。 先進技術という衣装をまとうだけで、古典的な加盟金ビジネスの罠が再び猛威を振るったのである。
グレーゾーンの闇に切り込む司法的包囲網
新密市人民法院による判決は、通常の商取引上の紛争と刑事事件としての契約詐欺との境界線を明確に引いた。1年から4年の実刑判決は、契約という体裁を取り繕った偽装詐欺に対して司法が断固たる姿勢で臨んでいることを示している。
本物のバッテリー産業が高電圧急速充電や高エネルギー密度の実現へと邁進する一方で、闇の産業チェーンは危険な廃材を用いて深刻な安全上のリスクを生み出していた。今回の司法判断は、粗悪なバッテリーが地方市場に流入する経路を遮断する一歩となった。
リチウム電池受託加工詐欺の横行は、産業の転換期において地方の生活者がいかに脆弱であるかを浮き彫りにした。富への願望が専門用語によって巧妙に搾取され、情報の非対称性を突いて利益が掠め取られた。「先端技術の内職」という上辺を剥ぎ取れば、そこにあるのは最も原始的な保証金詐欺の構図にほかならない。
参考リンク:
- CCTV財経の報道
- 河南省新密市人民法院の公開判決