32億画素の巨大カメラ、1枚の写真に50万個の銀河を捉える

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データソース:HN + web research · HN

32億画素の巨大カメラ、1枚の写真に50万個の銀河を捉える

50万個の銀河が、たった1枚の写真に収まった。

7月31日、チリにあるルービン天文台(Vera C. Rubin Observatory)が初の科学画像を公開した。COSMOSと呼ばれる天区において、50万個以上の銀河と5万個の天体がひしめく深宇宙の姿だ。撮影に使用されたのは、32億画素・重量約3トンという、小型車よりも巨大な世界最大のデジタルカメラである。

スマートフォンカメラの主流である5000万画素と比較すると、その解像度は64倍に達する。1回の撮影でカバーする視野は満月40個分に相当し、画像を全画素で表示するには380台以上の4Kテレビが必要となる。

ハッブルが20年かけた領域を、一回で掃引

ろくぶんぎ座の方向に位置するCOSMOS天区は、天文学で最も有名な観測エリアの一つだ。銀河系の円盤面から外れているため前景の星や塵が少なく、宇宙の最深部まで見通せる絶好の窓となっている。ハッブル宇宙望遠鏡が2003年から長年観測を続けてきたほか、電波からX線まで世界中の望遠鏡が観測を重ねてきた。

ルービン天文台は今回、数百回の観測データを重ね合わせて単一の深場画像を合成し、一挙に50万個の銀河を浮かび上がらせた。

ルービン天文台が撮影したCOSMOS天区の深場画像

図:ルービン天文台が捉えたCOSMOS天区の深場画像。画面を埋め尽くす光点のほとんどは恒星ではなく個別の銀河である。出典:Rubin Observatory / NOIRLab

50万個という数字の規模感について触れておこう。1つの銀河には通常、数千億個の恒星が存在する。つまり、画像に映る微小な光の点一つひとつの背後には、数千億の星々が集積している。画像内には、渦巻銀河の腕、滑らかな楕円銀河、衝突・合体中の銀河、さらには初期宇宙の赤方偏移した銀河まで観察できる。

深場画像から抽出された銀河のクローズアップ

図:深場画像から選出された銀河のクローズアップ。渦巻銀河、楕円銀河、合体中の銀河が鮮明に捉えられている。出典:Rubin Observatory / NOIRLab

ハッブルとの比較として、単一画像の深化深度ではハッブルが依然として優れており、より暗い天体を捉えることができる。一方、ルービンの強みは「広さ」と「速さ」だ。視野はハッブルの主カメラの100倍以上であり、同じ空を短周期で何度も撮影する。深掘りのハッブルと、広域走査のルービン。両者は相互補完の関係にある。

なぜ3トンのカメラが必要だったのか

その理由は天文台の名前に隠されている。天文台は暗黒物質(ダークマター)の存在を示す観測的証拠を発見したヴェラ・ルービン博士にちなんで命名された。銀河の外縁部にある恒星が想定以上の速度で回転している現象から、可視物質以外に広大な質量が存在することが示唆された。宇宙の全物質の約85%を占めるとされる暗黒物質だが、その正体は未解明のままだ。

暗黒物質を検証・測定するには、膨大な数の天体を長期間観測し続ける必要がある。ルービンの核心ミッション「LSST(Legacy Survey of Space and Time)」は、10年間かけて南半球の全天を3〜4日ごとに繰り返し撮影し、宇宙の10年間にわたるタイムラプス映画を作成する計画だ。ノイズを極限まで抑えるためセンサーはマイナス100度に冷却され、口径1.5メートルのレンズと6色のフィルターを装備。15秒の露光を毎晩千回以上繰り返す。

設置場所はチリ北部の標高2682mに位置するセロ・パチョン山。年間約300日の晴天に恵まれ、乾燥した澄んだ空気を持つ地球上最高の観測拠点のひとつだ。

COSMOS天区におけるLSSTカメラの繰り返し観測のフットプリント重ね合わせ示意図

図:COSMOS天区におけるLSSTカメラの観測フットプリントの重ね合わせ。同じ天域を反復撮影することで天体の時間変化を検出する。出典:Rubin Observatory / NOIRLab

この「タイムラプス映画」の用途は暗黒物質の解明にとどまらない:

  • 暗黒エネルギー:宇宙の加速膨脹の謎を解き明かすため、何億もの銀河の位置や形状の変化を追跡する。
  • 小惑星早期警戒:10年間で約620万個の小惑星を発見予定。直径140mを超える潜在的危険小惑星の早期特定を目指す。
  • 超新星などの一瞬の天体現象(トランジェント天体):超新星爆発やブラックホールによる星の破壊など、短時間で変化する現象の即時捉え。
  • 銀河系の構造解明:天の川銀河内の数千億の星々をカウント・マップ化する。

今回のEDP2データは全天の約3000平方度(南天の6分の1)をカバーするプレビューに過ぎない。50万個の銀河は本観測のほんの一部であり、10年間で約200億個の天体が記録される見込みだ。

天文学はデータサイエンスへ変貌する

データ規模は膨大だ。カメラは毎晩約20TB(高画質映画数千本分)のデータを生成し、10年間でペタバイト(PB)級のデータベースが構築される。

もはや人間の目だけで分析できる量ではない。かつて天文学者が写真を直接観察していた時代から、毎晩20TBが押し寄せる時代へ移行した。天体の分類、異常検知、超新星の検出アラートなどはアルゴリズムによる自動化が不可欠となり、天文学者の業務はモデル構築や異常値の検証へとシフトしている。今回の公開は、10年間の本格観測に向けたデータ処理パイプラインの検証でもある。

一般社会にとっても、この「データ洪水」には2つの重要な意味がある。第1に、地球防衛に関わる小惑星の早期警戒能力が格段に向上すること。第2に、ルービンのデータポリシーに基づき、2年の専有期間経過後に全データがパブリックに開放され、誰でも自宅から200億個の天体カタログにアクセスできるようになることだ。天文学データは特定機関の資産から人類全体の共有財産へと変化しつつある。

20年の曲折を経て結実した1枚

プロジェクトの道のりは決して平坦ではなかった。立案から初画像まで20年以上を要し、予算は当初予測の2倍以上に膨らみ、延期やプロジェクト中止の議論にも直面した。今回の画像は、無数の議論と技術的困難を乗り越えた成果である。

また、この画像は観測地であるチリへの贈り物でもある。公開当日、ルービンチームはこの画像を暴風雨に見舞われたコキンボ州の住民に捧げた。アンデス山脈の高原は、数十年にわたり人類の天体観測を支え続けている。

50万個の銀河は始まりに過ぎない。これから10年間、3トンの巨大カメラは毎夜、宇宙の変容を記録し続ける。観測可能な宇宙全体の動画像を手にする時代の到来に、期待が高まる。

参考リンク:

  • ルービン天文台ニュース:Rubin Observatory’s first LSST Camera release
  • HN 討論 (item?id=49183079)
  • SLAC プレスリリース:DOE-NSF Rubin Observatory opens a deep window on a famous cosmic field
  • Phys.org 報道:Rubin Observatory opens a deep window on a famous cosmic field