ビッグバン1億年後に岩石惑星が誕生:宇宙の惑星材料は想定より数十億年早く揃っていた

ビッグバン1億年後に岩石惑星が誕生:宇宙の惑星材料は想定より数十億年早く揃っていた

科学宇宙

データソース:Science News, Astrophysical Journal Letters, Phys.org, Sci.News

朝、マグカップを手に取るとき、その中に含まれる炭素、酸素、ケイ素などの元素は、宇宙が数十億年かけてゆっくりと蓄積してきたものだと長年考えられてきました。地球のような岩石惑星を作るには、宇宙という大鍋を長い時間煮詰める必要があるとされてきたのです。しかし、2026年8月に『The Astrophysical Journal Letters』誌で発表された最新のシミュレーション結果は、この従来の常識を覆す驚くべき結果を示しています。ビッグバンからわずか約1億年後には、惑星形成に必要な材料と水分がすでに揃っていたというのです。

ビッグバン後1億年で揃った惑星の建設資材

1億年と聞くと気の遠くなるような時間に思えますが、138億年に及ぶ宇宙の歴史においては、新生児の生後数日間に相当します。これまでの科学界の通説では、当時の宇宙は水素とヘリウムが漂うだけの荒野であり、岩石惑星の形成には数億年、あるいは数十億年を要すると考えられていました。

今回の新シミュレーションはこのタイムラインを塗り替えました。**宇宙の年齢が現在のわずか0.7%だった段階で、岩石惑星の卵である「微惑星(planetesimal)」がすでに形成可能であったことが判明したのです。**惑星形成のスタートラインは、従来の推定より数桁も前倒しされることになります。

第一世代の星の大爆発から 1 億年後の星雲場 図:第一世代の星の大爆発から 1 億年後の星雲場。出典:NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva

超巨大な先駆者たちが爆発で材料を供給

この異例とも言える超高速な惑星形成をもたらしたのは、宇宙最初期に存在した超巨大な星たちです。宇宙第一世代の星(Pop III)は非常に短命でした。その中でも最も質量の大きい星々は、「対不安定型超新星」という破局的な爆発を起こしてその生涯を閉じました。これはブラックホールや中性子星の残骸すら残さない完膚なきまでの大爆発です。

彼らは自らを粉砕し、一度の爆発で太陽質量の100倍を超える炭素、酸素、鉄などの重元素を周囲に撒き散らしました。**これらの材料が近くの原始ガス雲を直接汚染し、強力な重力によってガス雲が収縮して新たな小質量星が誕生。その周囲には重元素に富んだダストディスク(塵の円盤)が形成されました。**このディスクには、地球質量の惑星胚(惑星の卵)を複数形成するのに十分な材料が含まれていたのです。

超新星爆発によって放出される惑星原料のイメージ図 図:超新星爆発によって放出される惑星原料のイメージ図。出典:University of Portsmouth

原始ダストディスクに蓄えられた大量の水

この極めて古く形成されたダストディスクからは、岩石だけでなく予想外の大量の水も発見されました。ここに含まれる貯水量は、太陽系が形成された初期と比較しても数分の一程度しか下回らず、地球型惑星が形成される軌道領域には豊富な水が存在していました。

この発見は、生命の起源を探る研究においても大きな衝撃を与えています。ロスアラモス国立研究所の天体物理学者 Jarrett Johnson 氏は、**「生命に必要な原材料は、宇宙がそれらを提供できるようになるとほぼ同時に揃っていた」**と指摘しています。材料があるからといって直ちに生命が誕生するわけではありませんが、生命発生の舞台は従来のあらゆる予測を遥かに上回るスピードで整っていたことになります。

岩石惑星形成シミュレーションの配図 図:岩石惑星形成シミュレーションの配図。出典:Science News

天の川銀河に潜む生き残りの探索

このシミュレーションは、現在の観測によって検証可能な手がかりを残しています。モデルにおいてダストディスクに囲まれて誕生した新生星の質量は、太陽のわずか0.7倍ほどです。このような小質量星は寿命が極めて長く、現代の宇宙においても依然として燃え続けている可能性があります。

ポーツマス大学のアストロノマー Daniel Whalen 氏は、こうした極初期の惑星系が天の川銀河に取り込まれ、現在まで生き残っているとすれば、その異常な化学組成によって識別できると確信しています。化学組成が異常な小質量星をたった1つ見つけるだけで、宇宙がその幼年期にすでに惑星形成運動を始めていたことの決定的な証拠となるでしょう。

宇宙における岩石惑星の誕生は、誰もが考えていたよりも遥かに早いものでした。ビッグバンからわずか1億年後、第一世代の超巨大星たちは自らを爆発させることで重元素と水を宇宙に解き放ち、惑星形成の基礎を築いていたのです。

参考リンク:

  • Science News 報道
  • The Astrophysical Journal Letters 論文
  • Sci.News 報道
  • Phys.org 報道